命の光3 いつかきっとミニ

はっと亜由美は目を覚まして起きあがった。

体ががたがた震えるのを自分の腕で抱きしめながら抑える。

当麻の夢を追い払うなどと言って自分がそれに影響されてしまったようだった。

夢の中の当麻はずっと眠り続けて目を覚まさなかった。

名を呼ぼうが揺さぶろうが何をしても自分を見てくれなかった。

意識を失ってしまった当麻。

当麻の夢はかつて起こり得た可能性。自分の夢はこれから起こりうる可能性。

いずれ自分の運命に巻き込んでそうなってしまうかもしれない。

亜由美はベッドから抜け出すとふらふらと当麻が眠る簡易ベッドに近づいた。

そっと当麻の寝顔を見つめる。

「好き・・・です。愛しています・・・」

決して日の当る場所でいうことの出来ない想いをそっと小さく消え入るような声で告げた。

 

お前、と当麻が亜由美に言う。

何?と亜由美は問い返した。

いや、と当麻は答えた

昨夜、亜由美が好きだと告げる声を聞いた気がした。

確かめ様としてやはり当麻はやめてしまった。

想われたい一心でそんな風に聞こえたと勘違いしたのだろう。

夢、だったのだ。

「一体何? 何なの?」

しつこく聞く亜由美の言葉を封じ様として当麻がキスをする。

途端に亜由美の瞳から涙がぼろぼろこぼれた。

「ど・・・っ。どうしたんやっ?」

いきなり泣かれて当麻はうろたえ、関西弁で尋ねる。

亜由美は頭を振りながらぼろぼろ泣く。

「お前、やはり、俺のこと・・・」

嫌いなのか。

最後まで言えなかった。

肯定されるのが怖かった。

だが、キスされて泣くだなんていやがって泣かれたとしか思えない。

亜由美は当麻が何を言おうとしたのかすぐに察した。

顔を上げると当麻の唇に自分の唇を押し付ける。

驚いて言葉を失った当麻にたたみかけるように亜由美は言葉を吐く。

「嫌ってなんかいない。別にキスが嫌なんじゃない。キスなんていくらだってしてあげるっ。泣いたのはちょっと感情が不安定だったからっ。いい? わかった? 私は当麻を嫌っていないっ!!」

ものすごい勢いで言う亜由美を当麻はあっけに取られて見つめる。

「返事はっ?」

言われて当麻はこくこくとうなずく。

「わかりましたって言うのっ」

再度言われて当麻はわかりました、と言葉を口にする。

亜由美はそれを聞いて当麻の胸に頭を預ける。

「抱き抱きして」

小さな声でねだる。

いつ、自分は彼に好きだと告げられるだろう?

亜由美の心は切なくなる。

愛している、と今すぐ告げたい。

だが、言ってはいけない言葉。

もし、告げられる日が来るとすればそれはきっと当麻との別れの日だろう。

その日はもうすぐやってくる。

迫ってくる別れの予感に亜由美の心は震えた。

「抱きしめてよ・・・」

今だ呆然としていた当麻に亜由美はねだる。

ふわりと抱きしめられる。

「もっと、強く抱きしめて」

いつもなら恥ずかしくて言えないような言葉を真剣な声で言う。

当麻の亜由美の背中に回した手にほんの少し力がこもる。

「もっと」

「お前、壊れるぞ」

「いいから。もっとぎゅーっって抱いて」

亜由美は自分の体を当麻に押し付ける。

当麻は言われたとおりにぎゅっと強く抱きしめる。

亜由美が当麻の背中に手を回す。

亜由美は自分の心に当麻のすべてを刻み込む。

いつ、別れてもいいように。

決して忘れることのない様に。

髪の感触、香り、顔の造作、声、優しいまなざし、抱きしめる腕。

当麻のあらゆる部分を自分の中に仕舞い込む。

強く抱きしめられながら亜由美は心の中でずっと呟いていた。

当麻、大好き、愛している。

 

いつかきっとさよならの代わりに言ってあげる。

大好きです、と。愛している、と。

 

苦しく切ない心で亜由美はそう当麻に語り掛けた。