続々・赤ちゃん狂想曲 サンタさんがくれた天使後編

娘達によって第二次家族計画が発動されたが、予想に反して今度はまったく授からない。

こうあけすけに言うのもなんだが、努力してると言うのにまったく当らない。

自分の能力に限界を感じる当麻だった。

四旬節を控えたある日、当麻は突然教会に行くと言い出した。

仏教徒で自らサムライ・トルーパーと名乗る日本男児の夫がいきなり言い出して亜由美は目を丸くした。

ハトが豆鉄砲をくらった顔とはこういうことを言うのだろうか、と当麻と娘達は語り合ったぐらいだ。

当麻は教会にはお情け程度にしか顔を出していない。子供達が騒ぐといけないので勉学を一旦終えた亜由美も行ってはいない。

とりあえず、ひまを見つけては当麻は子供達を連れて教会に行き、日曜日には一家そろってしっかり礼拝に参加するという徹底振りだ。

クリスマスまでの4週間しっかりと当麻と子供達は教会に通った。

が、今だ神様は願いを聞き入れてくれないという事態に当麻は不機嫌になる。

それを流石に亜由美が忠告する。

「そんなにすぐに出来るのがおかしいって。ストレスとか緊張とかあるとうまく行かないよ?」

亜由美は勉学と家庭サービスの二つをこなして疲れきっている夫を元気つける。

「この間、病院に行って相談したら、それりゃ無理だろうって笑われたぐらいなんだから」

面白おかしく亜由美が事の顛末を話す。

悪い、と当麻が謝る。

「俺が原因って事も考えられるよな?」

だからぁー、と亜由美は言う。

「不妊の定義って知ってる? 避妊しないで三年以内に子供ができない人の事を言うのよ。子作りしだしてまだ二、三ヶ月じゃないの。

これが普通の人のペースだと思うけれど? 当麻も私も結構普通の人、ってことなんだから喜ばしいことじゃないの」

亜由美は明るく言いながらしわを寄せている当麻の眉間をなでてやる。

「ずっと学校と家で気が抜けない生活してるから疲れきってるのよ。たまには家のほうだけでもお休みしたら?」

言いながら亜由美はこっている当麻の肩をもんでやる。

「お前、マッサージの腕は一流だな」

久々に肩もみをしてもらって当麻が安らかな声を出す。

「そういう声が一番いいよ」

言って亜由美は当麻のこめかみにそっとくちづける。

「今日は久しぶりに何もしないで眠ろうね」

亜由美が優しく言い聞かすように言って当麻はうん、と答えた。

でもな、と付け足す様に当麻が言う。

「教会通いはやめんぞ。こうなったら日本人の根性を見せ付けてやる。仏教徒の意地だ」

とーま、と亜由美が笑う。

「キリスト教の神様が仏教徒の意地見せてもらってもうれしくないって。

素直に神様ありがとうっていう気持ちでいいんだって。

形に違いがあっても聖なるモノへの思いは世界共通なんだと思うよ」

「お前、キリスト教徒の癖に多神教的思想だな。お前のほうが日本人らしい」

当麻が尊敬して言う。

うーん、と亜由美は答える。

「私ってむかしっから日本人だったからなー」

自分の覚えている限りの過去世を思い出して亜由美は答える。

「でえもまぁ、日本的キリスト教も悪くないし」

亜由美が言葉を続ける。

その言葉に当麻がなんだそれ?と尋ねる。

だからね、と亜由美が説明をしだす。

二人は遅くまで宗教論を展開した。

 

年も明けてバレンタインもすぎ、もうすぐ三月かと言う頃、妊娠検査薬が陽性なのに亜由美は気付いた。

たまたま休みだった当麻に子供達を預けて外出する。病院に行くとは言わなかった。

もし万が一間違いがあればがっかりさせるから言えなかった。

が、確かに病院検査でも妊娠が確認された。

スキップでもしたい思いで亜由美は家へ戻る。

家に帰るなり当麻に抱きつく。

「どうしたんだ? 一体?」

いきなり抱きつかれて当麻が驚く。

「さぁて、どうしてでしょうか?」

面白そうな笑みが亜由美の顔に浮かぶ。

「ホワイトデーのお返しでも欲しいものがあるのか?」

もうすぐホワイトデーが来るのを思い出して当麻が言う。

「それはチョコレートの結婚年数分って決めてるでしょう? 本当ににぶちんねぇー」

言うと亜由美はかがんで子供達に尋ねる。

「おかぁちゃまは今とっても幸せでうれしいです。さて、どうしてかなぁ?」

にこにこと輝かんばかりの笑顔に子供達も笑顔になる。

「あかちゃん!」

綺羅が察して叫ぶ。

「ピンポーン。綺羅はおとうちゃまより頭がいいですねー」

亜由美は綺羅を抱きしめる。

その言葉をしばし放心して当麻が聞く。

「ちーちゃんもー」

綺羅が抱きしめられるのを見て千夏がくっつく。

はいはい、と言って亜由美が千夏を抱きしめる。

「千夏もとっても心の優しい子ですねー」

おかぁちゃま、と綺羅が亜由美の肩をつつく。

「おとうと? いもうと?」

「おとうとー」

と千夏が答える。

「うーん。千夏、それはまだまだわからないのよ。もっとあかちゃんが大きくなってからでないとわからないことだからね」

「わかるよ。ちーちゃん。おかぁちゃまのここにあかちゃんがいるんでしょう?」

千夏は亜由美の下腹部に耳と手を当てる。

「男の子って言ってるもん」

「千夏には聞こえるのね。その力大事にしてね。優しい心があればきっと千夏にいい経験をさせてくれるはずよ」

今だ下腹部に耳を当てている千夏に亜由美は優しく言って頭を撫でてやる。

それからまだ呆然と立っている夫に向かって言う。

「まだわからないの?」

いや、と当麻が口に手を当てて答える。

「そのわかったことはわかったが、なんだか急に力が抜けたと言うか・・・。放心してしまったと言うか・・・」

ふいに当麻の目に涙が浮かぶ。

亜由美は千夏をやさしく離して立ち上がると当麻をふわりと抱きしめる。

「旦那様ご苦労様。これからは私ががんばる番ね」

当麻が亜由美の肩に頭をのせる。

「ありがとう」

幸せそうに当麻が呟く。

「私のほうこそ、ありがとうって言わせて」

幸せそうに抱擁を交わす両親の回りを娘達がうれしそうに見つめる。

思い出した様にいきなり千夏が声を上げる。

「あかちゃんもありがとうって言ってたよ。皆がお祈りしてくれたからおかぁちゃまの所に来れたって言っていたよ」

「サンタさんのプレゼントね!?」

綺羅がうれしそうに確認する。お祈りイコール神様でプレゼントをくれるのはサンタさんという図式が娘達の間で成り立っていた。

うん、と千夏が頷く。

綺羅の言葉に亜由美が思い出した様に言う。

「そういえば、予定日クリスマスの頃なの。もしかしてとは思うけど当麻と綺羅と千夏のお願いを神様が聞いて

それならクリスマスにプレゼントしてあげようって考えてくれたんじゃないかしら?」

非科学的なことを亜由美は真剣な声で言う。

ふだんは恐ろしく現実的な当麻も頷く。

「そうかもしれないな。西洋の神様も捨てたもんじゃないな」

だから、と亜由美は言う。

わかってる、と当麻が答える。

「この世界のどこかにいる神様のプレゼントだろう?」

その言葉に亜由美がうん、とうれしそうに頷く。

当麻が娘達を見る。

「今年のクリスマスプレゼントはおかぁちゃまのお腹にいるあかちゃんでいいな?」

当麻の言葉に子供達がうんっ、と大きな声で答えて両親の足にくっつく。

「ってクリスマス・イブに産まれるとは限らないのよ?」

そう言う亜由美の顔はうれしそうに輝いていた。

「クリスマスプレゼントーはあかちゃんなのよー」

双子がうれしそうに歌ってくすくす笑う。

「間違いなくクリスマス・イブに産まれると俺はかけてもいいぞ」

当麻が面白そうに言う。

「なんたって俺達の年季の入った祈りがこもってるんだから」

その言葉どおり、クリスマス・イブの早朝、お腹の子はこの世に産声を上げることになった。

 

眠りに落ちていた亜由美は目を開けた。

当麻の顔が目に入る。

「ご苦労さん」

言って当麻は亜由美の頭を撫でる。

「龍星は?」

産まれた我が子の事を尋ねる。

「五体満足で無事に新生児室にいる。そりゃぁ、派手な泣き声だったぞ。お前に似て泣き虫かもな」

親馬鹿をさらにパワーアップさせて当麻が答える。

龍星、というのが長男の名前だった。

千夏の言う通り性別は男の子だった。

それが確定してから家族で名前を決める会議を開いた。

一番最初に言い出したのは千夏だった。

「あかちゃんねー、ももたろうがいい」

最近日本の昔話にこっていた千夏が言う。

「ももたろうはももから産まれたからももたろうなのよ。あかちゃんはおかぁちゃまのお腹から産まれるのよ?」

綺羅が注意する。

「だったらきんたろうは?」

太郎ねぇ、と亜由美と当麻は顔を見合す。

「いかにも長男って感じだな。もう少し芸のある名前がいいな」

当麻が呟きながら亜由美のまるいお腹を見つめる。

亜由美も考える。

男の子だからやはり当麻にちなんだ名前がいい。

しばらく当麻の顔を見つめる。

龍。

天高く舞い上がる龍と天空の当麻のイメージがだぶる。

「りゅう、龍の字を使ってみたいな」

亜由美が言う。

「龍か・・・。男の子らしくていいかもな」

当麻も頷く。

後は、と亜由美は言いながら愛娘を見る。

「もう一字はあなた達が考えなさい。あなた達の大事な弟なのだからね」

言うと愛娘達はうんっ、と嬉しそうに答えた。

二人は一生懸命考え出す。

男の子、と千夏は連発しながら考える。

ふいに目の前で自分達を優しく見守っている父親に目が行く。

「男の子はおとうちゃま。おとうちゃまは・・・何?」

隣の綺羅に尋ねる。

「おとうちゃまはおとうちゃまでしょう?」

綺羅が不思議そうに答える。

ああ、と亜由美は頷く。

千夏も同じ事を考えていたのだ。

「千夏はおとうちゃまから思うことを言っているのよね? たとえば、林檎は赤い、赤いといったらチューリップみたいな」

確かめる様に尋ねると千夏は頷く。

「おとうちゃまといったら・・・」

綺羅が千夏の顔を見る。

「お星様!!」

二人は一斉に声を上げる。

「龍と星か。どっちが上なんだ?」

当麻が尋ねる。

亜由美は紙に字を書いて読み仮名をふって教えてやる。

「こっちはりゅうとよんで、こっちはほし、せい、って読むのよ」

双子がそれを見ながら組み合わせを考える。

ほしりゅう、りゅうほし、せいりゅう、りゅうせい。

双子が考え出したものを紙に書きつける。

考え込んだ四人はぱっと顔を見合わせた。

「りゅうせい」

四人の意見が完全に一致する。

「龍星か。いいかもしれない」

当麻はそう呟くと亜由美のお腹に手を当てる。

「龍星でいいか?」

尋ねると返事をするかのようにお腹の子が動き回る。

「それでいい、と言っているようだ」

当麻がうれしそうに笑う。

それを聞いた千夏と綺羅が同じくお腹に手を当て耳を当てる。

「うん、って言ってる」

千夏が言う。

「ほんと。あかちゃん喜んでるのね」

不思議な力を持っていない綺羅はお腹の子が動いているのを感じて同意する。

「それじゃ、今日からあかちゃんは龍星ちゃんね」

亜由美が念を押すと家族は満足そうに頷いたのだった。

 

「子供達を呼び寄せて構わないか?」

えっ、と亜由美が尋ねる。

「待合室で待っているんだ。

産まれたと聞いてすっとんで来たんだ。

落ち着いてからと話したんだがどうしても龍星に会いたいと言ってな。

弟を見たら今度はおかぁちゃまは?と散々聞かれてとりあえずお前の目がさめてからどうするか聞こうと思っていたんだ」

亜由美はうーん、と考える。

ある日、亜由美は当麻にぽつりと言った。

「今度は流石に一人で産まないといけないよね?」

二度目ではあるが三年ぶりだ、なんとなく不安がついてまわる。

が、子供達の事を頼まないといけない。

不安そうな亜由美の顔を見た当麻はとっさに判断を下していた。

「今度は少し早めにお袋に来てもらおう。それなら俺も安心してお前に着いていてやれる」

いいの?、と亜由美が複雑な顔をして問う。

「やっぱり記念すべきときに父親不在はよくないだろう。お前も安心できるだろうしな」

そう言って安心させる様に亜由美の頭をぽんぽん叩く。

よかった、と亜由美は心底安堵してそれからふいに自分の記憶をよみがえらせた。

「ね、産んですぐには子供達に顔を見せたくないんだけど、いいかな?」

なんで?、と当麻が尋ねる。

「実は私が妹が産まれたときお母さんの顔を見て死んでるって思ったのよね。とても青い怖い顔で眠っているようだったから。

しばらく怖い思いをしたのよ。流石に産んですぐにこにこしてられないからねー。怖い思いはさせたくないの」

言われて当麻はわかった、と納得したのだった。

「顔色、大丈夫かな?」

亜由美は不安そうに尋ねる。

「あまりいいとは言えないが、少なくとも起きて話が出来たら大丈夫だろう」

当麻が亜由美の顔を観察しながら答える。

そっか、と亜由美は答え、呼んでと言う。

当麻は頷くと子供達を呼びに部屋を出ていった。

ドアが開いたかと思うとおかぁちゃま、と言って双子が飛び込んでくる。

後ろから一緒についていた当麻の母親が来る。

「静かにするお約束だろう? おかぁちゃまはお仕事を終えて疲れているんだからな」

最後に入った当麻が騒ぐ娘達を静かにさせる。

「おかぁちゃま、しんどい?」

綺羅が不安そうに尋ねる。

亜由美は微笑んで首を振る。

「ちょっとだけ疲れているだけ。あかちゃんを産むのは大変だから。

でも綺羅と千夏の顔を見たら元気がでてきた」

その言葉に娘達がうれしそうな顔をする。

「弟を見てどう思ったかな?」

亜由美は娘達に尋ねる。

「すっごくかわいいのー」

「他の赤ちゃんと違うの」

双子がそれぞれ感想を漏らす。

「違うって?」

亜由美は綺羅の答えに戸惑う。

「全然、おさるさんみたいじゃないの。他の赤ちゃんよりすっごくきれいなの」

綺羅が得意げに話す。

「そーなのよぅ。もう、天使みたいに綺麗なのよー。将来きっとハンサムになるわー」

綺羅の言葉を当麻の母が補足する。

ハンサム、といわれて亜由美は夫の顔を見る。

「ということは当麻似なのね」

亜由美が言うと当麻の母は全面否定する。

「とーま君なんて目じゃないわよっ。それはそれは綺麗な顔してるのだから」

当麻は一人息子なのにひどい言われようである。

「羽ないよ?」

やりとりと聞いていた千夏が言う。

ああ、と当麻が納得する。

「それは例えのことなんだ。真っ白な心持っている天使のように見えるということなんだ。

実際、この世界のことは何も知らないからな」

ふぅん、 と双子が納得する。

「それじゃぁ、りゅうはサンタさんがくれた天使なのね?」

綺羅が言う。

「そうね、あかちゃんは皆、天使みたいだから。でも、綺羅も千夏もおかぁちゃまの大事な大事な天使よ」

言って亜由美は微笑む。

「おとうちゃまにとっても綺羅と千夏は天使だよ」

当麻もそう言って娘達を抱き上げる。

当麻は娘達の頬にそれぞれチユっとキスをする。

「我が家は天使の宝庫ね」

幸せそうに目を細めて亜由美は言う。

その言葉に当麻もああ、と言って幸せそうに微笑んだ。

 

誕生秘話を聞かされた龍星は不思議そうな顔をした。

「僕、おかぁちゃまのお腹の中にいるときなんか覚えていないよ?」

「そりゃそうだろう。誰も覚えていないさ」

当麻が当たり前の様に言う。

「そうね。二才の時の事を覚えているおねぇちゃま達の方が不思議なのよ。

おとうちゃまに似て記憶力がいいのね、きっと」

亜由美はそう言って姉双子を見る。それから龍星を見て言う。

「りゅうはおとうちゃま、おねぇちゃま達に望まれてこの世に産まれてきたのよ。それを忘れないでね」

うん、と龍星は神妙な顔つきで頷く。

「おかぁちゃまはお祈りしなかったの? 僕を欲しいと思わなかったの?」

龍星が素朴な疑問を投げかける。

いいえ、と亜由美は首を振る。

「もちろんお祈りしたわ。でもね、内容は少し違ったわね。

神様が産んでもいいよって思ったなら、りゅうが産まれてきたいと思ったらくださいっていつもお願いしていたの。

りゅうがお腹にいると分かったときはそれはうれしくてうれしくてイギリス中をスキップして歩きたかったぐらいよ」

お前、と当麻が恨めしそうな視線を送る。

「なかなか授からなかったのはお前のせいだったのか・・・。俺達があんなに一生懸命に祈ったと言うのに」

「そりゃぁ、ものじゃないんだから、もののようにくださいなんて言えないでしょう? 

それにちゃんと祈りは届いたじゃない。

クリスマス・イブに産まれたっていうのが何よりの証拠でしょう? 

前の年にあわなかったから次の年にあわせてくださったのよ」

「えらく悟った人間に成長したな」

感慨深げに当麻が呟く。

「いつまでも子供じゃありません」

亜由美が苦笑いして答える。

ふぅん、と当麻は亜由美を見ると子供達に目を向ける。

「この家の中で一番、子供なのは誰だ?」

子供達はうーんと考える。

やはり、自分達よりばたばたしてそそっかしいと言えば母を指すことになる。

自分達より子供っぽいと思う時が多々ある。

しばらくして顔を見合わせると申し訳なさそうに亜由美を見る。

ちょっとぉ、と亜由美が情けない声を上げる。

「だそうだぞ。一番子供なのはお前だってさ」

当麻が面白そうにくつくつ笑って言う。

「もう知らないっ」

亜由美が怒ったように言ってそっぽを向く。

「そう言うところが子供なんだって」

当麻が指摘する。

「お、おかぁちゃま」

龍星が両親をとりなそうとして呼ぶ。

何?、と亜由美は表情を元に戻して聞く。

「あのね、僕、本当に天使みたいだったの?」

その問いに亜由美の顔に笑みが浮かぶ。

「今ももちろん天使みたいよ。でも、産まれたときの写真を見てみる?」

うん、と龍星はうれしそうに頷く。

「それじゃぁ、ケーキを食べ終わったら皆でアルバムを見ましょうね」

亜由美は子供達を見まわして言う。それから夫に視線を移して意地悪げな笑みを浮かべる。

「当麻、アルバム全部出してね」

「全部、か?」

山のようなアルバムの量を思い出して当麻が問う。

もちろん、と亜由美はにやりとする。

「この子のだけじゃ収集つかないでしょう?」

確かに一旦見出したら双子や次男の分まで手が伸びるのは明白だった。

正当な理由でしっかり反撃を返してきた亜由美の勝ちだった。

「段々、悪知恵がついてきたな」

当麻がげんなりして言う。

「おかげさまで」

亜由美は平然と礼を言う。

「お前ってほんとうにやな奴」

ふぅん、と亜由美はちろんと当麻を見る。

「そう言うこと言うの? 子供達連れて実家に帰ろうかなぁ?」

その言葉に当麻が顔を青くして慌てる。以前亜由美が子供達を連れて里帰りしたとき、当麻は大いに弱ったのだ。

それ以来、実家コールには弱いのだ。

「悪いっ。言いすぎた。だから出て行かないでくれっ」

どうしようかなー?、と亜由美は答えをじらす。

「あゆー。愛してるから。本当だからー」

当麻の情けない声が上がる。

ほら、ね、とやりとりを見ていた綺羅が龍星を小突く。

子供三人は顔を寄せ合って小声で言い合う。

「やっぱりおかぁちゃまが一番強いでしょう?」

綺羅の言葉に他の二人は力強く頷いた。