玄関のドアの前で思わず立ち尽くす。
どーやって切りだそう・・・。うーん。
考え込んでいると突然ドアが開いた。
「お前、何してるんだ?」
きゃー。いきなり林檎丸かじりのワイルド当麻君だー。
かっこいいったらありゃしないっ。
しかも、おかえりなんて言ってくれてキスまでしてくれる。
ああ、これぞ新婚の幸せよね・・・。
って、ふつー妻が夫を迎えるわけで・・・うーん。
「いつまで突っ立ってるんだ?」
「あ、うん。ただいま、と・・・」
我に返ってようやく靴を脱ぐ。
「今、茶を入れるから」
「あ、いいー。私するっ」
ばたばた走って当麻の背中にぶつかる。
「まぁ、いいから、大人しく座ってろって」
ちょこんとダイニングルームの椅子に座らされる。
いいのだろうか・・・。全国の当麻ファン(?)に殺される気がする・・・。
いや、掃除機をかける当麻とかという図がないだけ許してって気もするけど。
その絵を見たとき、流石に考え込んでしまったぐらいだし。
「やっぱ手伝うってー」
カウンターから見える当麻に声をかける。
「お前、中国茶の入れ方知らないんだろう?」
へっ?
「朝、届いた。で、入れ方秀に聞いておいたから。自分でするんならしっかり見て置けよ」
「うん・・・」
当麻の綺麗な手が中国茶を入れる。
思わず、うっとりしてしまう。
お前、と当麻の苦笑いする声が聞こえてはっと我に返る。
「みとれるのもいいが、ちゃんと見ておけよ・・・」
「ごめん」
「やり方、メモって置いたから後でしっかり見てやれよ。くれぐれも火傷しないようにな」
「うん」
当麻って相変わらず心配性。それも慣れたけど。
でもって、薫り高いお茶とごま団子が目の前に置かれる。
「おいち・・・」
堪能してしまう。
で、静寂。
しじま。
沈黙。
だんまり・・・・。
わーん。折角早く帰ってきたのにこれはなにーっ??
当麻はただひたすら新聞なんか読みながらお茶をすするだけ。
新聞なんて朝読んだでしょーっ?!
このジジくさい構図はなにー?
これでもまだ新婚四ヶ月なのよーっ!!
「とっ。とうまっ!!」
「何?」
と当麻が答える。
「えーっと。羽があったらどこ行きたい?」
はぁ? と当麻が問い返す。
「だからどこ行きたいって聞いてるんだけど・・・?」
「俺、羽なくても飛べる」
「・・・」
わーんっ。会話が一分と持たないっ。
「どーしてっ。とーまはそう現実主義なのーっ?」
悔しくなって叫んじゃう。
「そりゃぁ。どちらかが現実主義じゃないと路頭に迷うからだろう? 俺に非現実性を求めないでくれ」
淡々と当麻が答える。
わーんっ。帰ってきてから何度目かの泣き声を心の中で上げてしまう。
ああ・・・。私には無理だよぅ。
遠いキャンパスにいるさぁや達に声をかける。
というのも、さっき、さぁや達に新婚生活というものを聞かれて答えようとしてものすごい事にきづいてしまったのだった。
私と当麻って一体いつ会話してるのかって。
考えて見れば、朝起きて、一方的に私が用件話して学校行って帰ってきたら夕食作ってお風呂入って、
勉強して、英会話練習したらもう就寝時間・・・。会話なんて数えるほどしかない・・・。
新婚四ヶ月だというのにこの結婚うん十年的夫婦の形に流石に危機を覚えたわけで、それでさぁや達に
がんばって会話しろといわれて帰ってきたのよね・・・。
思わず、テーブルにつっぷす。
「茶がこぼれるぞ」
「わかってるわよっ」
がばっと起きたひょうしに茶器がゆれてお茶がこぼれる。
もうっ。いやーっ。
ぐすぐす言いながらテーブルを拭く。
「お前、今日、休講だったのか?」
「うんっ」
会話の糸口がっ・・・と思ったのもつかの間そうか、と言って当麻が押し黙る。
「とうまーっ。なんかはなそうよーっ」
こうなったら甘えてやるーっ。方法はなんだっていい。会話さえ出来たらっ。
「話すって何を? ん? 英会話でもするか?」
ぶちっ。
「この鈍感当麻っ」
がたっと立ちあがると外へ飛び出る。
「おいっ」
当麻が腕を掴もうとした瞬間、思いっきりテレポートしてやる。
ちょっとは反省でもしててよっ。

私と当麻って相性悪いのかしら?
思いながらふらふら大阪の街をふらつく。
テレポートと言ってもそうそう遠い場所に行ったら流石に帰ってくるのがしんどいから、
あえて、ご町内からちょっと遠いぐらいの場所に来ている。
でも・・・ここってどこ?
意味なくテレポートしたから全然場所わかんないよ・・・。
うそぉ。もしかして迷子になちゃった?
何も持たずにつっかけだけ履いて出たから携帯もお金もないし。
どーしよ・・・。
帰るにも人が多すぎてテレポート出来ない。
あゆのおばかぁ。
テレポートするならましなところに行ってよー。
あいかわらずてきとーなんだから・・・と怒っても仕方がない。
えーん。怖いおにーさんとかうろついてる・・・。
こわいよー。
錫杖に帰巣本能とかあるかな?
「ねーちゃん。ひとりか?」
こっ、声かけられてしまったっ。
「いいえっ」
と答えたけど、嘘なのまるわかりっ。
わーん。当麻ー。助けてー。
「ふぇ・・・。とぅまぁー」
「呼んだか?」
へっ?
振り向くと必死に走ってきたって顔の当麻の顔。
「この馬鹿者っ。出て行くときはふつーに出て行けっ。いきなりとぶなっ」
ってめちゃくちゃな怒り方だけどそんなのどーでもいいーっ。
「とぅまぁー。こわかったよぅ」
当麻の胸に飛び込むとやっぱりよしよしと撫でてくれる。
「妻が何か?」
当麻がぎろっとおにーさんを睨む。
おにーさんたちがすごすごと去っていく。
当麻強いっ。すごい。無敵っ。かっこいいっ。
「大阪怖いー」
「ってお前が無用心過ぎるの。怖いのはどこの都市も同じ。帰るぞ」
「うん」
手をひかれて帰る。
「まったく。いきなり鈍感とか言い出して、テレポートまでして、また何か言われたのか?」
てくてく歩きながら当麻が問う。
「ううん。ただ、最近、とーまとお話してないことに気付いただけ・・・」
「って。ちゃんと話してるだろう?」
「話してないもんっ。お夕食のこととかお風呂お湯入ったとかそんなことしか話してないもん。
このままじゃ、そのうちふーふの会話がなくなって離婚になっちゃうもん・・・」
お前ねーと当麻が額を押さえる。
「飛躍しすぎ。それに寝る前いろいろ話してるだろう?」
「それも学校のことでふつーの会話じゃないもん」
「どういう会話が普通の会話なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
って言われたら・・・。
「あゆ?」
「わかんない」
「だろうが。だったら今まで通りで全然かまわないの。I'ts all right?」
「うん」
「まあ、確かに最近かまってやらなかったのは認めるがな・・・」
ごちゃごちゃ話しながら家に着く。
家に着いた途端、抱き上げられてリビングへ連行される。そのままリビングの床に当麻が座る。
必然的に私は当麻のおひざを椅子代わりに座ってしまう。
「当麻?」
「とりあえず、話がしたいんだろう?」
「そーだけど・・・」
でも、だっこしながら話さなくてもいいんじゃ・・・。
「じゃぁ、降りるか?」
ぶんぶん首を振る。
「とーまのおひざ久しぶりだもん。うれしー」
にゃはと笑って当麻のおでこにおでこをくっつける。
さっきまで会話が出来ないなんて悩んでいたことなんかふっとんでしまう。
ごろごろ、とひたすら甘えてしまう。
「ごめんね。飛び出しちゃって」
「いい。もう、慣れてるから。だが、飛ぶのはやめてくれ。後追うのが大変だから」
「うん。ごめんね」
「もう。いいから」
ごろごろごろ。猫と化する私と飼い主当麻。
「とーま。大好き。あいしてるー」
「俺も」
抱き抱き。甘甘。ラブラブしてしまう。
キスなんていっぱいしちゃうわけで・・・。
きっと家中ハートマークがとびかってあふれてるかも・・・。
ハートマークの計り売りできそうだな。
近所迷惑にならないことを祈ろう。
「私達ってbest of 馬鹿っぷる?」
「だろうな。ま、いーんじゃないのか? 実害がないから」
「ってないのかな?」
「あってもやめるつもりないから」
って、それ、はた迷惑だよ。
「愛が世界を救うってどっかのテレビも言ってるだろう?」
「愛の種類が違うって・・・」
「いいの。俺はあゆを愛してるし、あゆも俺を愛してるの。それですべて丸く収まる」
「なんかごーいんな結論」
でも、ある意味本当だからいっか。こうしていちゃついてる分には迷惑かかってないもんね。
けんかしてるほうがいろいろ実害が伴うかも、って感じがするし。
「うーん。当麻、大好きだよー」
ごろごろ。べたべた。いちゃいちゃ。
会話するって当初の予定とは大幅に違うけどま、いいかな?
って、この一部始終、どーやって報告するの?!
一難去ってまた一難。
でも、しばらくこのbest of 馬鹿っぷる状態は続いてしまって、帰ってきたゲンイチロウ君パパは回れ右をして研究室へお戻りあそばしてしまった。
ごめんね・・・。ゲンイチロウ君パパ。
この馬鹿っぷる菌、誰かに売ろうかなどと言うと当麻はいいかもしれない、なんて言ったんだよね。
恐るべし、愛の力・・・。

2018/2/21 ワイルド当麻君のためだけに出てきた話。いろいろな現実も交じってますが。掃除機かける当麻・・・。見たいような見たくないような・・・。 来世編でやらせるか。